ペーパーレス化で増えたPDF目視チェックを自動化する【中小企業DX事例・企画フェーズ】
digisapo
1. なぜこの業務を見直す必要があるのか
近年、中小企業でも「ペーパーレス化」が進み、紙の書類の管理は減りました。
しかし、その反面、PDFで提出される書類の目視確認作業が増えていることをご存じでしょうか。
特にフランチャイズ（FC）本部の経理担当者にとって、売上データと提出資料の照合は膨大な手間がかかる作業です。
今回取り上げるDX事例は、大量のPDFから必要な情報を抜き取り、加盟店の提出内容と齟齬がないことを確認する作業のDX推進です。
某福祉系事業のFC本部では、経理担当者がロイヤリティ計算のために毎月この作業を実施しています。
単純に見える業務ですが、加盟店の経営状態や請求漏れのリスクにも直結しており、非常に重要な役割を持っています。
2. 現状の業務フローと課題
現行の業務フローは以下の通りです：
- 加盟店が報酬実績を回収システムに提出
- 提出時に行政から受け取った報酬実績の確証となるPDF資料を添付
- 経理担当者がスプレッドシートで入力内容とPDF内容を目視確認
- 齟齬があれば加盟店へ訂正依頼
特に手間がかかるのは、PDFの表示と内容確認です。
スプレッドシートに記載された社内ドライブ内のURLをクリックしPDFを開き、書類中の文言、入力された金額、申請の期間や事業所を一件ずつ確認しています。
毎月のデータ規模は計600ファイル程度（1事業所あたり数ファイル）で、作業には0.5日～1日を要します。
加えて、見落としがあった場合は行政とのやり取りなど追加作業も発生します。
このように、単純作業ながら人的ミスや請求漏れのリスクが潜んでおり、担当者の心理的負荷も大きい状況です。
関係者構造としては、直接的には経理部門が作業を担当し、売上データを元にした意思決定には経営企画部やSV（スーパーバイザー）部隊も関わっています。
改善の恩恵を最も実感できるのは経理担当者ですが、影響する範囲は広範囲に渡る業務です。
3. 理想の状態はこうあるべき
目指すべき業務フローは次の通りです：
- PDFをOCR（光学文字認識）で読み取り、加盟店入力情報と自動照合
- 照合結果に齟齬があればシステム上で通知
- 経理担当者は確認作業をほぼ行わず、月次処理の工数を大幅に削減
- 人的ミスや請求漏れリスクを低減
この「目視チェックの完全自動化」が達成されれば、経理担当者はより価値の高い業務に集中できます。
組織全体の意思決定も正確かつ迅速になります。
改善効果のKPI（Key Performance Indicator：重要業績評価指標）は「目視チェックの自動化率100%」です。
4. どんな方法で改善を検討したか
改善にあたり検討した方法は以下です：
Google Vision API（GCP）
- 社内環境と親和性が高く、月600件程度であれば無料で利用可能
- 開発担当者も技術的実現性が高いと判断
Azure OCRやSaaS OCR
- 導入コストや既存システムとの親和性に課題があったため採用せず
最終的にはGCPのOCRを採用。
判断基準は、コスト面、社内環境との適合性、開発担当者の技術的実現性でした。
懸念事項としては、PDF形式が自治体単位で異なる可能性、形式変更の通知がない場合に読み取れない可能性、PDF画質の低さ、欠損資料の存在などがありました。
これらは、KPI達成率を調整しながら検証フェーズに進めることで、経理担当者と合意して対応しました。
今回の記事では、業務の現状と課題、理想像、改善検討の方向性を整理しました。
PDF目視チェック自動化のDX企画フェーズの参考にしてください。
次回は、この目視チェック自動化を実際に技術的に検証し、どのような手順で自社環境に適用できるかを具体的に紹介します。
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